皆さんは、「良い音」とはどのような音を想像しますか?
綺麗な音、よく響いている音、あるいは、身近な先生や先輩や仲間の音を思い出した人がいるかもしれません。
私の考える「良い音」とは、意図した音のことです。
無機質や当てずっぽうに出した音は、意図が感じられません。ただ、音を拾っただけ、弾(はじ)いただけの演奏で終わってしまいます。
それでは、意図して弾(ひ)くとはどういうことなのか?
その違いは、音に対しての「意識」にあります。
どんなに難しい曲を速弾きできても、一音一音に意図がなければ、説得力に欠ける薄っぺらな演奏になります。そういう演奏は、指がよく動いてすごいね!ということだけです。
ここでは、良い音を作るための「3つの意識」について、説明いたします。
もくじ
マンドリンの良い音を作る:①出したい音をイメージする
ほとんどの人は、曲の練習をする際には、曲の始まりから音を拾いながら進めていきますよね。
しかし、その後もずっとそれを繰り返しただけでは、仕上がりに時間がかかりますし、音を辿っていくような演奏にしかなりません。ある程度の音取りができたら、大まかな曲の雰囲気は掴めているはずです。
ですので、音作りの作業としては、
のように考えてみると、曲の構成も見えてきて、出したい音のイメージが出てきやすいです。
そして、練習を進めていく際には、音を出す前に、出したい音のイメージを持つことが大切です。
その結果、一音一音について、よりはっきりとした意図を持って、練習を進めることができます。
音には、優しい音、温かい音、爽やかな音、悲しい音、切ない音、深い音、激しい音、などなど、人の感情や自然の情景の数ほど、種類はたくさんありますね。
その全てを厳密に弾き分けるなんて難しいです。しかしながら、イメージを持つことはできます。
「この曲は明るいので、跳ねる感じだな」→「ピッキングをスタッカートにしてみよう」とか。
「この曲はしっとりしているので、ブツブツ切らさず繋げたいな」→「レガートにできるだけ余韻を残そう」とか。
そういうことを考えるだけでも、ワクワクしてきますね。
マンドリンの良い音を作る:②自分の出した音をよく聴く
自分の出した音が、イメージした音と同じかどうかを確認します。
「意図したけれども、違う音になってしまった。」あるいは「思ったより汚い音になってしまった。」という場合と、何も考えずに、ただ漫然と「そういう音が出てしまった。」というのでは、全く異なります。
そういう人は、実は、自分の音が良いか悪いかも分からないかもしれません。
という私も、以前は「音を聴くように」と言われて、自分は聴いているつもり、でいました。
では、「聴く」というのはどういうことなんだろう・・・?それは、「人のお話をよく聴く」のと同じことだと言えます。聞いているつもりだけど、聴いていない、ということが実は多いですよね。
自分の音に耳を傾けることです。
一番最初に確認したいのは、楽器の音色として、よく響いているか?です。
音が詰まっていないか?音が濁っていないか?音が割れていないか?音がこもっていないか?
「ただいまー」って帰宅したお子さんの声の調子で、「今日学校どうだったのかな?」と気に掛ける親御さんのような気持ちで、自分の音を聴いてあげるのです。
左手の押弦と右手のタッチのタイミング、力加減を事前に狙って、スタッカートがスタッカートになっているか、レガートがレガートになっているか、をしっかり確認します。
マンドリンの良い音を作る:③イメージと同じ音を出せた時の心身の感触を覚える
イメージした音が、実際に出せた時は、とてもスッキリした気持ちと手元の感触があります。それを、しっかりと感じ取ることが大切です。
「今、良い音が出せたな」「今、綺麗な音だったな」「今、楽に弾けたな」と思った瞬間の気持ちと感触を、自分の脳に覚えさせるのです。
そして、どのようにして、そのように弾けたのかを考えてみます。そうすれば、次に同じような音を出したい時に、それをイメージして目指すことができます。
その気持ちと感触というのは、自分にしか分からないものです。他人に説明できることでも教えてあげられることでもありません。
自分自身で掴まなくてはいけません。
イメージの習慣化
上達したいと思うなら、専門的な指導者に習うことは必要と思いますし、私もそれはオススメします。ただし、先生に習ったからといって、誰しもがすぐに上達するわけではありません。先生や先輩に、音の良し悪しを注意してもらったり教えてもらったりしたとしても、そのような人が綺麗と言ったから綺麗、汚いと言ったから汚い、と思うのではなく、自分で判断できるようにならないといけません。
特に指導者にはつかず、自分自身で取り組んでいるのであれば、尚更のことです。
自分で判断できる人は、自分で良いと感じた音が出せた時、左手は、フレットのどの辺りを、どの角度で、どれくらいの力で押さえ、右手のピックを持つ指先、手首がどの状態で、どのようなタッチで弾いたら・・・ということを、事前に考えるようになります。
そう!自分で考えることのできる人は、上達は早いです。
イメージを持って、音を出し、その音を聴きながら、次の音のイメージを持って、その準備をし、確認し・・・の連続で、演奏中の頭の中はとても忙しいものです。
もう少し具体的に説明しますと、譜面に関して言うなら、今、弾こうしているところを見て音を追いかけるのではなく、実際の演奏の場所より少し先の部分を確認しながら演奏します。楽器に関して言うなら、運指やポジションなど、今、弾こうとしている時に確認するのではなく、次に押さえるフレットや移動先のことを考えておきながら演奏します。
実際に音を出す身体(左右の手)は、イメージの後を追って付いてくる、ような感じです。
初心者の方や、初めての曲を手にした時は難しいですが、イメージすることが習慣化されると、それが当たり前になります。
ただ単に、音を拾って、ミスしないようにという意識だけでやっていると、なかなか良い音にも繋がらず、上達するのも遅くなります。
そして、イメージ練習の癖づけによって、うっかりミスというのは、殆ど無くなります。
まとめ
イメージの習慣化が身につくと、演奏にも余裕ができ、良い音、良い演奏に繋がります。
さらには、楽譜、曲、演奏を俯瞰して見る(聴く)ことができるようになります。簡単な曲であっても、難曲であっても、それは同じです。
「テクニック」というのは、一音を出すための事前の準備が、余裕を持って整っている、ということですね。それは、狙って音が出せる、ということです。そして、それが演奏の流れの中で連続で行える、ということです。
「良い音」を出したい!と思うあなたを応援しています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。