どの楽器でもスポーツでも、良いパフォーマンスをするためには、それに必要な力と、同時に脱力が大切です。マンドリンも力任せで弾いたり、力んでばかりでは、音が割れたり濁ったりします。そして腕も疲れてしまいます。
この記事では、左手の脱力の方法についてご紹介いたします。
右手の脱力については、こちらの記事を参考にしてみてください。
もくじ
左手の力みの5つの原因
左手の力みには、次のような原因が考えられます。
①弦を押さえる指に力が入っている。
②弦を押さえていない指に力が入っている。
③親指に力が入っている。
④手の甲や手首、腕に力が入っている。
⑤楽器の不具合
それでは、それぞれについて、ここから具体的に解説していきます。
マンドリン左手:①弦を押さえる指に力が入っている場合の脱力方法
先ずは、弦を押さえている指に、力が入り過ぎている場合です。
実際には、演奏するために必要な力もあります。それ以外の余計な力みを無くすことが大切になります。
指の付け根を広げるストレッチをする。
演奏するときには、各指を分離して、独立させた動きが必要になります。
指先は離れていても、第2関節や指の付け根がガッチリとくっついてしまって固めている場合があります。隣りの指同士がギュッと握りしめていないか確認してみてください。
指の付け根を広げるストレッチは、多少の効果はあります。
関節(の筋肉)を鍛えるためのトレーニングをする
脱力が大切とは言っても、弦を押さえるために必要な力というものがあります。それをチェックする方法を説明いたします。
先ず、机の上に左手の指を立てて置きます。次に、右手の指で第1関節を押してみます。
この時に、関節が潰れたり凹んでしまう場合は、力が弱いということです。押されても凹まないように抵抗に応えてみてください。
しかし、頑張り過ぎてしまうと、必要以上の力みになります。腕まで力が入っていませんか?
右手で第1関節を押して、凹む手前が弦を押さえるのに必要な力です。それ以上の力は抜いてみてください。
虫様筋を鍛えるためのトレーニングをする
虫様筋は、4本の指を付け根で屈折させ、第1関節と第2関節を動かすための、手のひらの中にある筋肉です。指の緊張を緩める働きもあると言われています。
先ず、指先を緩めて伸ばしている状態から、各指を一本ずつ、付け根から曲げてみてください。
この時に、反動は付けずに、指の付け根だけで曲げてみます。そして、指や手が硬直していないかを確認します。
もし、この時に指が硬くなっているようであれば、緩めるようにしてみてください。これを、力を加えずにゆっくりと繰り返します。
指先だけを伸ばして押さえようとしない
楽器を構えたフォームで、常に人差し指に重心を置いて、そこから他の指を伸ばしていませんか?
特に小指を使うのが苦手という人は多いですが、例えば小指を使う場合は、人差し指を支点として引っ張らずに、手全体の重心を小指側に傾けると楽になります。
指の第1関節と第2関節がどちらも程よく曲がっている状態だと、力まずに済みます。
理想としては、第1ポジションで全ての指を揃えて同時に押さえられると良いのですが、そうでなければいけないと無理をして力んでしまっては良い音は出せません。
前述のストレッチで指をほぐすトレーニングをしつつ、演奏の時は無理をしないようにしてください。
スケール基礎練習などを繰り返しやっていく中で、段々と指が広がってくると良いですね。
補足ですが、指を広げるということについてですが、隣り同士の指先と指先を広げるというよりも、手のひらの中の関節を広げる、と意識すると、より遠くへ広がります。
左手の押さえ方について、こちらの記事も参考にしてみてください。
→マンドリン左手の押さえ方 より少ない力で良い音を出すための4つの方法
マンドリン左手:②弦を押さえていない指に力が入っている場合の脱力方法
実は、押さえている指ではなく、その他の指に力が入っていて、スムーズな運指、演奏を妨げてしまっていることがあります。
では、実際に楽器を持って音を出してみます。
スケール基礎練習などで試してみるのも良いので、具体的なやり方を説明いたします。
これは、時間はかかりますが、じっくり、ゆっくり一音ずつ取り組みます。
例えば、4G線のラの音を人差し指で押さえて音を出した時に、他の指が硬直していないかをチェックします。
人差し指で押さえている時に、中指が突っ張っていないか?あるいは、小指がピーンと立っていないか?ネックの下に潜り込んでいないか?などです。
そして、人差し指以外の指をフリーの状態に緩めてみてください。
これを、各指それぞれ押さえてみて、その都度、他の指が硬直していないかを確認してみます。
そこで、自分の苦手な指や癖が見つかりましたら、意識して緩めることを繰り返します。
地道な確認になりますが、自分の手と脳に良い状態を覚えこませるまでやります。
マンドリン左手:③親指に力が入っている場合の脱力方法
本来、親指はネックを支える(添える)だけで、握りしめてはいけません。しかし、どうしても、ネックを挟んで親指と他の4本指とで押し相撲をしている状態になってしまいます。
これでは、スムーズな演奏も出来ませんし、腕も指も疲れてしまいますよね。
親指を外して弾いてみる
一番手っ取り早い練習は、親指を外して弾いてみる練習です。
やり始めは、逆に力んでしまう場合がありますが、親指を外しても弾けるコツを掴み始めると、力まずに力が抜けてくるようになります。
すぐには慣れないかもしれませんが、やっていくうちに出来るようになります。
これをマスターすると、親指無しで、ピッキングもトレモロも、ポジション移動も出来るようになります。
その上で親指を添えて弾いてみると、本当に楽に感じますよ。
スーパーボールを取り付けて弾いてみる
親指付け根の窪み辺りにスーパーボールをテープで貼ります。
その状態でいつもの練習を進めます。
ネックと親指に距離が出来ますが、スーパーボールがクッション代わりになります。
指板を押さえる指先のフォームも変わるかもしれませんが、自然に小指が指板に近づくフォームになります。
それで上手に弾けるようになったら、スーパーボールを外して弾いてみてください。
これもまた、とても楽に感じるはずです。是非、試してみてくださいね。
マンドリン左手:④手首や腕全体に力が入っている場合の脱力方法
実際に動かしているのは指先ではありますが、手は肩甲骨から繋がっています。
最初に指のストレッチについて書きましたが、体全体のリラックスがとても重要です。
肩が上がっていないか、肘を固めていないか、脇腹を締めていないか、腕がねじれていないか、など、身体を硬直させる原因がないかチェックしてみましょう。
深呼吸をして、息を吐き切ってリラックスします。
肩から腕をだらんとさせて、緩めてから楽器を構えてみてください。
そして、弾き始めた時に違和感がないかどうか考えてみてください。
腕や手首、そして手の甲が引きつってないか、痛みがないか、確認してみてください。
少し窮屈だと感じたら、ほんの少しネックを上げるとか、前に出すとか、それだけでも随分と楽になることもあります。
②③④についてのチェックリストをまとめた記事はこちらです。
→マンドリン左手フォームについて 力んでいないか14個のチェックポイント
⑤楽器の不具合がある場合について
ある程度、年数の経ったものや、しばらく使っていなかったものの場合、ネックが反っていて、どうしても、ギュッと押さえないといけない時もあります。
特に、5フレット~10フレット目辺りでそのような時は、手を痛める前に修理に出して調整してもらうことをお勧めします。
学校のクラブの備品を使っている場合や、個人でも古い楽器を取り出した場合、管理状態がうまく行き届かず、そういうことが分からずに頑張って弾いていることもあります。
マンドリンって力が必要で疲れるもの、そして指が痛くなるもの、と思っているとしたら、決してそうではありません。
楽器の調整後は、それまでの力みが噓のように弾きやすくなります。そのような専門店に問い合わせてみてくださいね。
まとめ
右手の脱力、開放弦の脱力が出来ていても、左手を押さえるとまた力が入り過ぎてしまうものです。
左手の脱力が出来ると、右手も力が抜けて、演奏が楽になり、音が綺麗になり、そしてピックコントロールが可能になります。
そうすると、演奏技術が高まるのはもちろん、豊かな演奏表現へと幅が広がります。
必死になって演奏する姿は、素敵ではあります。
ただ音を辿って終わるような必死さではなく、出したい音の意識を持った演奏が出来るようになると、さらに楽しめるようになります。
マンドリンライフを楽しみたいあなたを応援しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※この記事の中でご紹介致しました脱力方法については、「ヴァイオリンを弾くための身体の作り方・使い方 基礎編」(柏木真樹 著/株式会社せきれい社)を参考にしたものもあります。私自身が実践してみて、マンドリンでも効果があったものです。身体についてご興味があり、もっと詳しく知りたい方は、是非、読んでみてください。