どの楽器でもスポーツでも、良いパフォーマンスをするためには「脱力」が大事と言われています。マンドリンを演奏する上でも、やはり脱力、特に右手首の脱力はとても重要となります。
なぜなら、よりスムーズなピックコントロールが可能となるからです。そして、それが自分の求める演奏表現に近づくことにも繋がります。
また、不本意にも本番で緊張してしまったとしても、手元の確認をすることで、自分の意識下で対処することができるようになります。
それでは、具体的にどのようにして右手の脱力を身に付けるのかを説明します。
もくじ
マンドリン右手の脱力のためのステップ
マンドリンの右手の脱力を身につけるために、以下の6つのステップを順番にやってみてください。
それでは、ここから具体的に説明いたします。
①机の上に、前腕部を乗せます。
肩を下げて全身の力も抜いて、机の上に置いている自分の手の重みを感じてみます。人間の手の重さは、約5㎏位ということです。とにかくリラックスして、机の中に手が沈んでいくようなイメージになると、重さは感じられているでしょう。
例えば、元気に遊んでいるお子さんに「高い高~い」をしてあげる時は、自分の頭の上まで抱き上げてあげることができますが、ぐっすり眠ってしまっているお子さんを抱きかかえるのは結構重くて、落とさないようにと思うと大変です。熟睡している大人の人を動かすのはかなり難しいものですよね。そのように、リラックス=脱力は重さを感じることがとても大切です。
②手首を少しだけ(1cm~3cm)、机から離して浮かします。
机との接点は、指先と肘です。机の広さや次の説明の部分のやり易さにおいて、肘ではなく前腕部のマンドリンを弾くときにボディに触れる場所でも良いです。机に触れる指先は5本ともです。
③ペットボトルのキャップを手で被せ、バイバイをするように、手を左右に振ります。
この時の腕の振り方が、最も重要になります。ポイントの一つ目は、腕を棒状に真っ直ぐに動かさないこと。二つ目は、手首を折って手先だけを動かさないこと。
キャップが、指と一緒にくっついて動くやり方ではダメです。おはじきを振るように、手のひらの中で左右に揺れ動くようにします。
④揺らし方が分かったら、キャップを外して同じように振ってみます。
初めは大きく振って、手首から先が吹っ飛んでしまうのではないか、という位にグラグラに抜きます。この「しなり」を感じることが脱力を身に付ける第一歩です。
自分の手の重さによって、左右に振られている感覚を確認します。
⑤手の重さによるしなりができたら、④と同じ動きのまま、振り幅を小さくしていきます。
腕の中の動かす感覚が違ってしまったら、戻って大きな振り幅で確認し、繰り返しやってみてください。
この「しなり」が自分の腕の中の感覚で分かるようになると、実際の演奏の時にも役立ちます。そして、本当の意味での脱力が身に付いて、手首から先の部分が自然に振れるようになります。
意識としては、指先が先に行くのではなく、親指側、小指側それぞれの付け根辺りの外側が先で、後から指先がついてくる感覚を、確認してください。
⑥机の上でやってみた手の振り方を、自分のお腹辺りで動かしてみます。
このしなりの感覚を習得するのは、すぐには難しいかもしれませんが、繰り返しやってみて無意識でできるようになると良いです。
そして、実際に楽器を構えて演奏してみてください。
実際の音出しでまた力んでしまったら、再度、机の上で振りの練習を繰り返して、確認してみてください。
マンドリン右手の脱力のためのコツ
上手に演奏している人の右手を見ると、手首から先だけを動かしているように見えるかもしれませんが、それは他人からはそのように見えるだけです。
見よう見まねでやっているときは注意してください。
他人からは見えないけれども、自分自身で感じる手(腕)の中の感触を大切にしてください。
また、手首を深く曲げて関節を固定させて弾くスタイルもありますが、手首を固定させてしまうと柔軟性は失われてしまい、細かなパッセージの動きへの対応が難しくなります。
そして、弦を弾(はじ)く際に回転も加わってしまいますので、手首を曲げる角度はそんなに必要ありません。
実際の演奏においては、「腕のしなり」「手首のしなり」「指のしなり」を技術レベルや曲によって、使い分けていきます。初めは、腕のしなりを身に付けて、その感覚が理解できたら、しなりの意識を手先の方へ移行していきます。
マンドリンの張力はかなり強いですので、ピックをしっかり握らなくては、と思うかもしれませんが、この脱力の習得ができていると、ピックを挟む力も少なく済みます。
それは、弦にピックを当てに行くのではなく、ピックが弦に吸い込まれていくような感覚を得られるからです。
まとめ
紹介した6つのステップを、何度も繰り返し実際にやってみて、確実に脱力を身に付けて欲しいです。そして、無駄な力みを無くして、表現力豊かな演奏ができることを期待します。
最後まで、お読み頂きましてありがとうございました。